「NEX Race」
それはスピードの中で進化したレース
そこに命を賭ける伝説のレーサーを、人々は「エトワール」と呼んだ
(※呼びません)
皆さんは『HIGHSPEED Étoile』(以下:ハイスピ)というアニメを御存知だろうか?
2024年春クールの話題は『ガールズバンドクライ』と『夜のクラゲは泳げない』が強かったのだが、そんな中で放送していたレースアニメである。
個人的にこのアニメは割と面白かったし好きなアニメではあるんだが、非常に惜しい作品だったなと思う作品である。
あまり酷評的な記事は書きたくないのだが、どうしてもこのアニメの「惜しい」と思った部分を文字にしておきたいため今回は書くことにした次第である。
というわけであまり口の悪い書き方はせず、あくまで主観的な一視聴者の感想という面を忘れずに書いていこうと思う。
それでは始めていこう。
『HIGHSPEED Étoile』とは
まず本作についてのザックリとした解説である。
本作は近未来。車の動力がガソリンから新エネルギー「ハイパー」に変わり環境問題が解決へと向かっている世界。レースは「ハイパー」を動力としたレーシングカーによる時速500kmのレースが主流となり、レースのタイヤ交換は自動化されている。
そんな世界のレースにひょんな事からレーサーになった主人公・輪堂凛の一年の成長物語が本作の内容となっている。
監督は『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』や『装甲娘戦機』の元永慶太郎、キャラクターデザインは『魔法少女リリカルなのは』でお馴染みの藤真拓哉、アニメーション制作は『超可動ガール1/6』や『装甲娘戦機』のstudio A-CATとなっており、studio A-CATにとっては(確か)初のフルCG作品となる。(と言っても少しだけ作画シーンはあるのだが)
また本作の特徴としては『TIGER & BUNNY』の様な企業ロゴがあり、現実の会社のロゴなどがスーツやメット、車体やレースの看板などに描かれている。
本作の感想
本作の感想だが、やはり最初に書いた通り「悪くはないしやりたいことは分かるし好きな作品だけど微妙な作品」というのが全てだろう。
最後まで見ればキャラクター、特に主人公の凛が好きになるし、最終回の展開はやはり良かったなと思う。しかしそこに行きつくまでの道中に少々難があったなと感じるのが今作の抱える物だろう。
問題点、と書くと一消費者なのに上から目線でおこがましい気もしてあまり使いたくないのだが、今回は「(個人的に感じた)問題点」として紹介していくことにする。
本作の問題点
ここの項目を読む前に注意してほしいのは、これはあくまで個人的に感じた部分であって、決して本作を否定しようとも貶そうとも思ってはいないのでそこは注意してほしい。(重複してるね?)
第1話が要らない
もうタイトル通りである。
第1話は何をしたかと言うと、世界観や設定の説明、キングやクイーンという強い人たちが居ると言った部分を主人公が一切出ないまま丸々一話レースをして説明している。
しかも2話でも似たような事をしているためぶっちゃけ1話は必要なく、最終回まで見ても「1話は必要だった」と思えないものであった。
また、3話と4話も「凛がキング(クイーン)と知らないまま一緒に行動する」という展開を2話連続で全く同じようにやっており、必要無いとは言わないと言えどそこも少々見てて不満に思う部分だろう。
キャラクターの描き方
このアニメでは一応日常回があるのだが、全体の6割ほどはレース回で占めている。
そのせいもあってか、キャラクター個人の掘り下げが薄いだけでなくリンと仲間たちはどう言う経緯で仲良くなってどういう関係性で今にあるのかという部分が全くと言っていいレベルで描かれていない。特にプリマステラ(今作におけるレースクイーンみたいな存在)の日向光莉というキャラは特にその割を食っており、凛とは深い仲であるということは伝わってくるが、具体的にどういう存在なのかという部分がさっぱり描かれていないため、本人たちの関係性と視聴者に伝わる情報に齟齬が生まれていると感じる。
レースシーンの描き方
本作のレースシーンは特に最初の方はお世辞にもあまり良いと言える物ではなかった。近年のレースアニメの『MFゴースト』や『オーバーテイク!』に比べても「レースをしている」という緊迫感が出ておらず、複数のマシンが同じ速さ、一定の車間で動いている状態だった。ただここは中盤辺りから回復するため結構良くはなる。
また、前述した『MFゴースト』や『オーバーテイク!』に比べても「どこを走っているのか分からない」、「実況と解説が淡々としすぎていて盛り上がらない」といった要素がある。また、これが何周もするレースという前提で描きながらも過程を吹き飛ばすので余計に状況がよく分からない事になっている。いやまあリアルなレースは50周とかするらしいし実況なんかもそんな感じらしいがそこはアニメの嘘でいいだろと思ってしまう。
レースの設定
これはぶっちゃけ「リボルバースト」と「AI」の存在になってくる。
まず「リボルバースト」。これはもう公式の用語解説を見た方が早いのだが、ざっくりと説明するとレース中に使う回数が限られている加速装置である。もっと分かりやすく言うと、マリオカードでキノコをⅩ個持った段階でスタートし、そのキノコをいつ使って相手との差を出すかみたいなシステムである。そう、マリオのキノコが必殺技なのだ。それも50周以上するレースで。
このシステム、作中では使用タイミングによる駆け引きを助長させるものとして用意しているのだが、これはあまり要らなかったなと感じてしまう。何故かと言うと16人くらい居るレースで基本使うのはメインキャラ程度なので「なんでみんな使ってないの?」と感じてしまったりする部分が出てきてしまうからだ。また、リボルバースト自体は本人の技量に影響する物としての持ち味が薄いため、これで勝っても正直視聴者感情としては否定的になってしまう人も居るだろう。
そして二つ目に「AI」。こちらは作中二種類存在しており、レースでドライバーをサポートするためのAIとレースの頭数のためのAIが存在している。
まず前者のサポートAIだがこちらは主人公・凛の相棒のamiちゃん以外全く描写されていない。そのため、他のキャラクターがどうAIを使っているのかなどが分からないため、必然的に凛がサポートを受けながらも全く勝てない存在の様に見えてしまう。これは他のキャラでも少し描写を挟むだけでも変わっただろう。
そして後者のAIだが、こちらは作劇として全く機能していない存在なので忘れてしまっても構わない。本当に頭数担当である。
作品の目標
本作の最終着地点として「凛が最終回でキングに勝つ」という物がある。
これが見え見えで凛が毎回中々勝てないなのはまあ良いのだが、これと「レース回は固定メンバーでレースをしている」という要素が掛け合わさった結果、凛が本当にレースの才能の実力が無いんじゃないかと思えるレベルで凛の実力が分からない状態となっている。
凛はレースゲームの腕が良いためスカウトされたという過去が描写されているのだが、そこが活きるシーンがまるで無いためそこもチグハグになっていただろう。
また、これが先行しすぎた結果マシン強化回直後にスタートミスをして失格になるやamiの指示をちゃんと聞かずにリボルバーストをした結果スリップして終わるなどドジなミスで勝たせない展開が発生してしまう。これは『遊戯王ARC-V』において遊矢の負けるデュエルをあまりやろうとしなかった結果、デュエル中断や一方的なアクションマジック、敵が変な負け方をしだすと言った描写の歪みに似た物だろう。
上記の問題が何故起こってしまったのか
では何故上記の問題が起こってしまったのかというのを個人的に考えていこうと思う。
本作は「フルCGアニメ」、「作中に企業ロゴが出る」、「1クールアニメ」、「ソシャゲやノベルゲーが出る前提のアニメ」という4つの要素が合わさった結果悪い方向に働いた側面があっただろう。
まず前者二つだが、これが合わさると何が発生するかと言うと「毎回同じメンバーでレースをすることになる」という物が発生する。ここに「凛が最終回でキングに勝って優勝する」という要素が掛け合わさった結果、上記でも書いた通り実力もあまりない毎回勝てない主人公・輪堂凛という物が発生してしまう。
例えば凛が小規模レースでなら表彰台に登れるくらいの描写を描くだけでも凛の実力の部分の印象は違っただろう。
しかしそんなにもCGモデルが作れないのと、スポンサーロゴが出る都合上毎回そこの販促をしないといけないため、そう言った部分に描写を割けなかった実状があるだろう。
そして後者二つが合わさった結果、「気になった人はゲームでより知ってくれる」という前提のキャラクター作劇になってしまう。しかしそれをやった結果それまでちゃんと描写されてこなかった「凛がバレエをやっていた過去」が最終回では凛のバックボーンとして重要な要素として描かれるというとんでもない事故を発生させてしまう。
また、キャラクターの全体的な描写不足な結果、ポジションがよく分からないのに何故か主人公達と仲のいいソフィアと劉と言った存在や、(視聴者からすると)よく分からない存在だが凛を励ますキャラとして重要な仕事をする光莉といった描写が出てきてしまう。
また、ゲームで深堀りするのが前提かのキャラクター要素もあり、1クールアニメなのにその辺がとっ散らかっていたのも問題だっただろう。
本作の総評
まあ色々と書いてきたが、個人的には「この作品を最後まで見て良かったな」と思う。
上記で「キャラクター描写の薄さ」を指摘したが、第6話「バックマーカー」の様にキャラクターが生き生きとしていた日常回や第8話「あなたの走り」の様に少し捻った回はあったし、レース回でも第7話「幸運の女神」や第9話「上海ナイトレース」の様にキャラクターにフォーカスを当てた回も存在している。
また、レースシーンに関しても麻宮騎亜がコンテを担当した回は見応えあるものとなっているため、そう言った点も必見だろう。
なにより、藤真拓哉デザインの可愛いキャラクター達が特に後半になるにつれて可愛く描写される。それだけでもかなり良いことだろう。
なのでボクはこの作品が嫌いじゃないし、好きな方だと思っている。
まとめ
いかがだっただろうか。
幣ブログにしては少々珍しい切り口での紹介ブログとなったと思う。
しかしボクはこのアニメを見てる時に「このアニメの諸々の感情をいつかまとめよう」と思っていたため今回このようなブログを書いた次第である。
まあでも本作は見てない人は見てほしいなと思う。
なんか言葉も纏まらないし今回はここまでである。
次回は2024年春クールに救世グラスホッパーと相対したあのバンドのアニメのブログでも書こうかなと思っている。
というわけで今回はここまでである。
それでは次回のブログで。ノシ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
(追伸)
PCの方でのブログの装いを新しくしました。
スマホアプリだと反映されてないかもしれませんが変え方が分かれば変えます。